あらすじ
吉村正子は、クリーニング店を営む母親を手伝う冴えない40過ぎの女性。家にとじこもりっきりで、恋人はおろか友人さえもいない。そんなある日、母親が急死してしまう。通夜の晩、ホステスをしている妹が正子に向かっていつものようにきつい言葉をぶつける。カッとなった正子は妹を殺してしまう。我に返った正子はその場から逃げ出す。そして、初めて外の世界へ出た正子の逃亡生活が始まった。
作品考察・見どころ
藤山直美という稀代の表現者が、その「顔」一つで観る者の魂を鷲掴みにする。彼女が演じるのは、抑圧された日常を捨て、逃亡という名の旅路で初めて自己を解放していく魂の咆哮だ。佐藤浩市や豊川悦司ら実力派キャストが、彼女の圧倒的な熱量に呼応するように人間の生々しい業と悲哀を体現し、映像に凄まじい密度と緊張感を与えている。
阪本順治監督は、絶望の淵に立たされた人間が放つ異様な生命力を、泥臭くも鮮烈な映像美で切り取った。社会の境界線から溢れ出した者が、罪を背負うことで皮肉にも「本当の自分」を確立していく過程は、痛快ですらある。本作は単なる犯罪ドラマの枠を超え、人間のアイデンティティと生存の本能を根底から問い直す、圧倒的な人間讃歌の傑作と言えるだろう。
映画化された原作や関連書籍を読んで、映像との違いや独自の世界観を楽しみましょう。