エジプト映画の至宝シャーディアの引退を飾る本作は、究極の母性を描いた魂の記録です。血の繋がりと自己犠牲、貧困ゆえの過酷な選択を、剥き出しの感情で描き出す演出は圧巻。観る者の倫理観を揺さぶり、無償の愛が孕む過酷なまでの献身という真理を、重厚な映像美で突きつけてきます。
ユスラとファルーク・エル=フィシャウィが魅せる、葛藤に満ちた演技も白眉です。映像でしか捉えられない繊細な表情が、社会階級の壁や人間の業を浮き彫りにしています。古典的な品格を保ちつつ、現代にも通じる普遍的メッセージを放つ本作は、映画史に刻まれるべき情熱的な人間賛歌です。