江口のりこが体現する、無機質な静寂の奥に潜む狂気的な渇望こそが本作の神髄です。アロマという目に見えない香りを、肌の質感や湿り気を帯びた映像表現によって、まるで鑑賞者の鼻腔を突くような生々しい感触へと昇華させています。他者の肉体的な痕跡に執着するヒロインの姿は、滑稽でありながらも、究極の孤独に抗う人間の根源的な熱情を感じさせ、観る者の五感を激しく刺激します。
若き染谷将太の透明感あふれる存在が、歪んだフェティシズムと鮮烈なコントラストを成し、物語に底知れぬ緊張感を与えています。正常と異常の境界線を軽やかに飛び越え、剥き出しの欲望を肯定していく演出は、理性では捉えきれない人間の多層的な魅力を浮き彫りにしています。映像でしか成し得ない官能の可視化に挑んだ、極めて独創的で挑発的な傑作です。