一夜限りの野外公演という「奇跡」を収めた本作の魅力は、小田原城という本物の史跡が放つ圧倒的なリアリティにあります。降りしきる雨さえも演出へと変えた極限状態の中、泥を跳ね上げ静寂を切り裂く殺陣は、通常の舞台では到達し得ない生々しい生命力を放っています。歴史の重みと、今この瞬間に消えゆく刹那が交錯する映像美は、観る者の魂を激しく揺さぶります。
キャスト陣の鬼気迫る演技も白眉です。山姥切国広らが背負う宿命を、剥き出しの表情と研ぎ澄まされた身体能力で体現しています。一夜の夢のような美しさの中に戦う者の高潔な精神性が克明に刻まれており、映像という枠を超えて歴史の目撃者となるような没入感を与えてくれる珠玉の一作です。