本作の魅力はフランソワ・クリュゼが見せる圧倒的な「動」の演技にあります。閉塞感を打破しようともがく人間の滑稽さと切なさが、テンポの良い演出と共鳴し、観る者を惹きつける熱量を生み出しています。人間の弱さを肯定する温かさと、フランス映画特有の洒脱な軽やかさが同居する絶妙なバランスが、この作品を唯一無二のものにしています。
作品が提示するのは、偶然が人生をどこへ運ぶのかという普遍的なテーマです。固定観念を脱ぎ捨て、新たな一歩を踏み出す瞬間の瑞々しさを、ダイナミックな映像美が鮮やかに捉えています。疾走感溢れるリズムの先に、未来が開けていくような清々しいカタルシスを感じさせる、まさに心の解放を呼び起こす珠玉の喜劇です。