本作が放つ真の恐怖は、パニック映画の枠を超えた、人間の「狂気的な執着」にあります。困窮から脱するためにバッタを育てる母親が、自らの血肉を捧げ、群れと共生を超えた一体化を遂げる姿は、母性の歪んだ発露であり、自然の摂理を侵す者の悲哀を冷徹に描き出しています。
主演のスリアン・ブラヒムによる、理性を失い変貌していく演技は圧巻です。無数の羽音が鼓膜を震わせる音響演出が、観客の生理的恐怖を限界まで引き上げます。倫理と生存本能が交錯するこの衝撃的な映像体験は、環境への警鐘を超え、人間の業を深くえぐり出す傑作です。