本作が描くのは肉体の売買を超えた権力の深淵です。六〇年代パリの退廃的な空気の中、性を政治の道具へと変えたマダム・クロードの野心と孤独が、重厚な映像美で綴られます。主演のカロール・ロシェが見せる冷徹さと脆さは圧巻で、男たちの支配下で自らの帝国を築き上げた彼女の生き様は、スリリングで残酷な美しさを放っています。
単なる成功譚に留まらず、頂点に立つ者が支払う代償や女たちの連帯と裏切りを冷徹に切り取った演出も見事です。影を活かした撮影が、彼女たちが暗躍した世界の秘匿性を際立たせ、観客を歴史の闇へと誘います。欲望の果てにある虚無を体現した本作は、一人の女性が影の主役として君臨した時代の熱量を、鮮烈に蘇らせています。