黒沢清監督の瑞々しい才気がほとばしる本作は、論理的な思考を軽やかに裏切るアヴァンギャルドな祝祭空間が最大の魅力です。全編に漂うミュージカル的な軽快さと、実験的な構図が織りなす映像美は、観る者の視覚を刺激し、現実とフィクションの境界を鮮やかに曖昧にします。
主演の洞口依子が放つ圧倒的な無垢さと、伊丹十三が見せる怪しげな知性の対比は圧巻です。人間の本能や欲望を学問的な視点から解剖しようと試みながら、結局はその熱量に翻弄されていく人々の滑稽さは、まさに映画でしか表現し得ない「生の肯定」に満ちています。既存のジャンルを軽々と飛び越える、極上の知的エンターテインメントです。