ナワーズッディーン・シッディーキーが見せる、これまでの強烈な役柄を覆すような愛嬌たっぷりの「ダメ男」ぶりが本作の白眉です。結婚に焦る中年男性と、海外移住という野望を抱く若き女性。この二人の打算と欲望が交錯する中で生まれる滑稽でいびつな化学反応は、単なるロマンスの枠を超えた人間臭い魅力に溢れています。
物語の根底には、地方都市の伝統的な結婚観や家族の期待という重圧が横たわっています。しかし、それを悲劇ではなく皮肉の効いた喜劇として描き切る演出が実に見事です。美化されない現実と、ままならない人生の苦さと甘さが入り混じる瞬間。タイトルの通り、崩れやすい幸福の本質を突いた鋭い視点は、観る者の心に深い余韻を残すでしょう。