本作の真骨頂は、三輪自転車という奇抜な手段で進むロードムービーの形式を借りて、自己探求という普遍的なテーマを軽妙かつ鋭く描き出した演出にあります。広大な空の下、あえて速度を落とした旅の描写は、効率を重んじる現代社会へのアンチテーゼのようでもあり、登場人物たちの心の機微を丁寧に掬い取る装置として見事に機能しています。
主演のナオミ・モリスが放つ、若さゆえの脆さと芯の強さが同居する演技は圧巻です。血縁という既存の枠組みを超え、奇妙な道連れと共に「本当の自分」を再定義していくプロセスには、観る者の魂を揺さぶる強烈なメッセージが込められています。単なるコメディの枠に収まらない、人間賛歌としての深い輝きを放つ傑作です。