本作の真髄は、ギャンブルを運命という神の摂理に挑む「形而上学的な闘争」として描いた点にあります。ジャック・デュトロンが見せる、虚無感と狂気が同居した静かな演技は圧巻です。イカサマという背徳的な行為を通じて、世界を支配する偶然性をねじ伏せようとする人間の傲慢さと気高さが、息を呑むような緊張感の中で見事に結晶化されています。
バーベット・シュローダー監督の冷徹かつ耽美的な演出は、カジノを一種の聖域へと変貌させます。愛よりも濃密で危うい共犯関係は、観る者の倫理観を激しく揺さぶり、勝敗の先にある生の実感を渇望する人々の業を浮き彫りにします。不確実な運命に身を投じるスリルと、その果てに待つ虚無の美学に、誰もが心を奪われるはずです。