本作が描くのは、鉄の塊に魂が宿るという狂気的な美学です。漆黒の首都高を舞台に、悪魔のZと呼ばれる蒼いフェアレディZに魅入られた者たちの、命を削るような執念が画面越しに伝わってきます。実車による迫力の走行シーンは、単なるカーアクションを超え、孤独なドライバーたちが抱く魂の咆哮を見事に視覚化しています。
膨大な情報量を持つ原作に対し、この映画版は速度と音という映像メディア特有の武器で、物語の核心を研ぎ澄ましました。チューニングの細かな説明を排した代わりに、腹に響く重低音や流れる夜景が、文字では表せない陶酔感を生んでいます。主演陣の抑制の効いた演技も、このストイックな世界観に深みを与え、観る者の本能を強く揺さぶります。