本作は、軽妙なコメディとスリリングな謎解きが奇跡的なバランスで融合した、黄金期ハリウッドの隠れた傑作です。チャールズ・ラグルズの円熟した喜劇的センスと、ロバート・ペイジの快活なエネルギーがぶつかり合うことで生まれる火花は、単なるドタバタ劇を超えた知的な愉悦を観客に与えてくれます。偶然が重なり、事態が制御不能な方向へと加速していく演出は、人間の皮肉な運命を見事に象徴しています。
特筆すべきは、緊迫感あふれるミステリーの骨格を、洗練されたウィットで包み込む絶妙な語り口です。登場人物たちが不条理な状況に翻弄される姿は、滑稽でありながらも、真実を追い求める人間の業と愛おしさを鋭く描き出しています。一瞬の油断も許さないテンポの良い展開と、演者の確かな演技力が織りなす映像美は、まさに映画という媒体でしか味わえない極上の興奮に満ちています。