エジプト映画の黄金期を象徴する本作の真髄は、伝説的コメディアンであるイスマイル・ヤシーンと、希代のスターたちが織りなす圧倒的なアンサンブルにあります。肉体美と気品を兼ね備えたタヒヤ・カリオカの存在感と、シャディアの愛くるしい輝きが火花を散らす中で、ヤシーンの変幻自在な表情と動きが、単なる喜劇を超えた多幸感を観客に与えてくれます。
本作が問いかけるのは、真の「ヒーロー」の定義という普遍的なテーマです。煌びやかな歌とダンスの合間に、臆病な小市民が勇気を振り絞る姿を滑稽かつ切なく描く演出は、観る者の心を掴んで離しません。笑いの裏側に潜む人間賛歌と、銀幕でしか味わえない贅沢なスペクタクルが融合した、まさに映像芸術の極致とも言える一作です。