本作の核心は、加害者と被害者という単純な構図を解体し、観客の倫理観を根底から揺さぶる点にあります。孤独の果てに手を取り合った男女の逃避行は、痛いほど純粋な愛の形を浮き彫りにし、本当の悪人とは誰かという答えのない問いを我々の胸に深く突き刺します。
深津絵里と妻夫木聡が魂を削って挑んだ演技は、言葉を超えた静かな熱量で圧倒的な没入感を生んでいます。冷徹な社会の歪みと、その対極にあるむき出しの人間性がぶつかり合う演出は、息苦しいほどの緊張感と美しさを放ちます。理屈を捨てて人間の本質に触れたいと願う、すべての方に捧げられた情念の傑作です。