フルーツ・チャン監督が描く、汚濁と熱気に満ちた香港の裏側が鮮烈です。スラム街の混沌とした風景と、すぐ隣にそびえ立つ近代的なショッピングモールの対比は、欲望と絶望が隣り合わせの都市の残酷さを象徴しています。寓話的な不条理さとブラックユーモアが混ざり合い、観る者の倫理観を揺さぶりながらも、その圧倒的な映像美から目が離せません。
主演の周迅が見せる、無垢さと狡猾さが共存する圧倒的な存在感は必見です。彼女が体現する「異物」としての魅力が、閉塞した日常を破壊し、物語を加速させていきます。本作は単なる社会風刺に留まらず、変わりゆく香港という土地そのものが抱える、痛烈でアイロニカルな情動を映し出した傑作と言えるでしょう。