あらすじ
ビストロで働く美しいギャルソンのキョウコ。幼い頃に義父から受け続けた性的虐待により、彼女の中にはさまざまな人格が共存していた。キョウコを愛するレズビアンの直美、ビッチなゆかり、そしてあの頃の小学生のままのハル……キョウコの中の彼女たちは辻褄を合わせ、互いに支え合っていた。しかし、マンションの隣人が憧れの小説家と知ったキョウコが恋心を抱いたことをきっかけに、今まで感じたことのない歪みを覚えるようになるり……
作品考察・見どころ
中田秀夫監督が描き出すのは、人間の精神が崩壊の淵で放つ、危うくも美しい不穏な輝きです。本作の根幹にあるのは、自己の中に異質な他者が共生するという逃れられない孤独と、その均衡が崩れた瞬間に溢れ出す狂気の美学。閉ざされた空間で増幅していく緊迫感は、単なるスリラーの枠を超え、魂の悲鳴として観る者の深層心理を激しく揺さぶります。
主演の飛鳥凛が魅せる、多重人格という難役への凄まじい没入は圧巻の一言に尽きます。仕草や声色、瞳の奥に宿る熱量だけで異なる個性を峻別させ、一人の女性の中に潜む聖と俗、静と動を鮮烈に体現しました。愛欲と破壊が表裏一体であることを残酷なまでに突きつけるその熱演は、鑑賞者の視線を釘付けにし、胸の奥底に消えない残響を残すことでしょう。
映画化された原作や関連書籍を読んで、映像との違いや独自の世界観を楽しみましょう。