本作の魅力は、イタリア喜劇の至宝リノ・バンフィの爆発的な熱量と、エドウィジュ・フェネシュの神々しいまでの美しさが織りなす究極のコントラストにあります。ドタバタ劇の中に潜む、人間の欲望を全肯定するような祝祭的ムードは圧巻です。緻密な誤解の連鎖と、息つく暇もないテンポ感は、まさに職人技といえる演出の賜物でしょう。
小心者ゆえに嘘を重ねる主人公の滑稽さは、体面を気にする我々の悲哀を笑い飛ばす洗練された人間賛歌でもあります。理屈抜きで五感を刺激する映像美と情熱的な演技の応酬は、観る者の生命力を呼び覚ますほどの破壊力を持っています。これぞ娯楽映画の真髄であり、人生を謳歌するための至高の処方箋といえる傑作です。