本作の真髄は、広大な風景に滲み出す人間の滑稽さと愛おしさのコントラストにあります。ドラマとコメディを軽やかに往復する演出は、人生の不条理を突きつけつつも、不思議と心地よい開放感をもたらします。視覚的な静寂が登場人物たちの心の機微を饒舌に物語り、観る者を日常から解き放たれた深遠な内省の旅へと誘うのです。
クリスチャン・ブイエら実力派キャストによる、抑制の中に情熱を宿した演技も白眉です。言葉に頼らぬ沈黙が生きる本質を語り、目的地よりも過程にこそ価値があるという普遍的なメッセージを力強く響かせます。魂の渇きを潤すような、豊潤で知的な映画体験を約束してくれる傑作と言えるでしょう。