田舎で床屋を営む男のもとに現れた、元恋人の女性。翌日に結婚式を控えた彼女は、うなじの毛を剃ってほしいと彼に頼む。14年ぶりの再会。ぎこちない空気の中、薄れかけていた記憶が色彩を取り戻し始めるのだった。
山田孝之の静謐な演技と行定勲監督の詩的な映像美が共鳴し、言葉にならない感情の機微を見事に掬い上げています。靴職人という手仕事を通して描かれる「過去との再会」は、沈黙の中に潜む切実な熱量を浮き彫りにし、観る者の記憶を優しく揺さぶります。 原作の内省的な物語を、実写ならではの「音」と「質感」で拡張した点に本作の真髄があります。文字では表現し難い、二人の間に流れる張り詰めた空気や繊細な所作は映像表現の独壇場です。人生という「点」が繋がる瞬間の美しさは、原作の精神をより鮮烈に、そして残酷なまでに美しく描き出し、圧倒的な没入感をもたらしてくれます。
監督: 石川慶
脚本: 石川慶