本作が放つ最大の魅力は、戦後直後の混迷期にありながら、過酷な労働環境に身を置く人々の逞しさを鮮烈なリアリズムで描き出した点にあります。煉瓦工場の熱気と煤煙が画面越しに伝わるような力強い演出は、単なる生活の記録を超え、泥にまみれながらも明日を信じる人間の根源的なエネルギーを観る者の魂に叩きつけます。
野口重雄の原作が持つ鋭い観察眼を、映像ならではの光と影のコントラストで昇華させている点が見事です。文字では捉えきれない煉瓦の重みや、赤木蘭子が見せる芯の強い演技は、過酷な現実の中で磨かれる人間の気高さを雄弁に物語っています。再生へと向かう日本映画の夜明けを感じさせる、泥臭くも高潔な情熱に満ちた傑作です。