本作は、形見という物質に宿る執念と、喪失感が招く狂気を極めて鋭利に描き出しています。主演のジュリア・カンパネルリが見せる、静かながらも底知れぬ圧を放つ演技は圧巻で、たった一枚のセーターを巡るやり取りが、観る者の喉元を締め上げるような緊張感へと変貌していく様が見事です。
特筆すべきは、日常の裏側に潜む滑稽さと恐怖を同居させた演出の妙です。愛着という名の呪縛がいかに人間を支配し、均衡を崩していくか。物質への固執を通じて剥き出しになる人間の孤独と本能を、この映画は冷徹かつ情熱的な眼差しで射抜いています。短尺ながらも、鑑賞後の心に消えない染みを残す濃密な一作と言えるでしょう。