本作の最大の魅力は、アルゼンチン喜劇界の至宝ペペ・アリアスが見せる哀愁漂うユーモアの真髄にあります。彼は単なる道化ではなく、庶民の悲喜こもごもを全身で体現する稀代の表現者です。その繊細な表情の変化や絶妙な間合いは、言葉の壁を超えて観る者の心に直接語りかけ、滑稽さの奥底に潜む深い人間味を鮮やかに描き出しています。
また、本作は英雄という概念の危うさを突き、社会が作り上げる虚像の脆さを鋭く炙り出しています。周囲の思惑に翻弄される小市民の姿を通じ、人間の本質を突く風刺精神が全編に溢れています。デルフィ・デ・オルテガら名優陣とのアンサンブルも相まって、笑いの中に人生の真理がキラリと光る、時代を超越した傑作といえるでしょう。