この映画は、アントン・ヴェーベルンの音楽が内包する極限の静寂と、張り詰めた緊張感を圧倒的な映像美によって視覚化することに成功しています。一音一音に宇宙を込める彼の作曲思想を、静止画のような厳格な構図と、鋭利なカッティングが完璧に追体験させてくれます。まさに視覚化された十二音技法とも呼べる演出は、観る者の聴覚だけでなく視覚をも研ぎ澄ませ、純粋な芸術体験へと誘います。
作品の本質は、装飾を削ぎ落とした先にある純粋な真理の探究にあります。余白にこそ強烈な意味が宿るという彼の美学を、映像という饒舌な媒体であえて沈黙を用いて体現する手腕は見事です。孤独な天才が追い求めた結晶のような音の世界が、スクリーンを通じて観客の魂を浄化し、芸術の核心に触れさせる至高の映像体験を約束してくれます。