本作は、現代人が抱く「丁寧な暮らし」への憧憬を皮肉たっぷりに解体する、毒気の効いた人間賛歌です。のどかな風景を背景にしながらも、そこに漂うのは癒やしではなく、人間のエゴや滑稽さが剥き出しになった奇妙な緊張感。この「自然体」とは程遠い混沌こそが、観る者の予定調和を心地よく裏切る本作の真骨頂です。
谷川昭一朗、津田寛治、川瀬陽太ら名優たちが、噛み合わない対話の中に切実な孤独と熱量を共存させる怪演は圧巻です。古民家の湿り気まで映し出す映像美と、予測不能な展開の先に待つカタルシスは、まさに映画ならではの贅沢。理想と現実の狭間で足掻く人々を肯定するその眼差しに、震えるような生命力を感じるはずです。