本作は、血縁や伝統という既存の枠組みを超え「新しい家族の肖像」を描き出した意欲作です。ロンドンと台湾という対照的な舞台を活かした演出が見事で、異郷での孤独と故郷の閉塞感の間で揺れ動く心情を、慈しみ深いカメラワークが捉えています。エミー・ライスの繊細な演技は、母性という名の葛藤をリアルに体現しており、観る者の心に鋭く問いかけます。
愛の形が多様化する現代で、命を繋ぐ重さと責任を真正面から捉えたメッセージ性は圧巻です。本作はLGBTQという題材を、普遍的な「家族の愛とエゴ」の物語へと昇華させています。単なる権利の主張に留まらず、人間が根源的に持つ「何かを遺したい」という切実な願いを映し出した、魂を揺さぶる結晶と言えるでしょう。