木下惠介監督による、戦後日本の混沌をえぐり出す演出に圧倒されます。実録映像を挿入して個人の悲劇を時代の動乱へ接続する手法や、傾いた構図がもたらす視覚的不安は、崩壊する家族の歪みを鮮烈に象徴しています。映画という媒体の「記録」と「表現」を融合させた、極めて実験的で力強い映像美が最大の魅力です。
主演の望月優子が体現する、献身が報われぬ母親の凄絶な悲哀は魂を激しく揺さぶります。親子の断絶を通じ、戦後の価値観変容が生んだ冷酷なエゴイズムを告発する本作のメッセージは、時代を超えて突き刺さります。愛が絶望に変わる瞬間の残酷さと人間の孤独を直視したこの傑作は、観る者の倫理観を激しく問い直す至高の人間ドラマです。