想田和弘監督が放つ本作は、モノクロームの映像美により、港町に流れる時間を鮮烈に描き出します。「観察」に徹したカメラが捉えるのは、土地に根ざした人々の息遣いです。色彩を削ぎ落としたことで光と影が際立ち、何気ない日常が崇高な芸術へと昇華されています。
村田氏らの飾らない姿は、老いという営みを慈しみ深く照らします。失われゆく風景への哀愁を超え、生と死、他者との交流の尊さを静かに問いかける演出は圧巻です。一瞬一瞬が観る者の心に触れ、忘れかけていた人間味を呼び覚ます、至極のドキュメンタリーといえるでしょう。