あらすじ
第二次世界大戦直前、戦雲うずまく亜細亜の魔都・マンチューリ。ヨーロッパ情勢を視察した山下奉文陸軍大将は、モスクワから帰国すべくシベリア鉄道に乗車していたが、謎の鉄道爆破で、急遽“満州菊富士ホテル”に宿泊を余儀なくされる。そこに同宿することになったシベリア超特急の一等乗客たち。やがて、密室で乗客のひとりが殺される事件が起きる。
作品考察・見どころ
水野晴郎という稀代の映画愛好家が放つ、ほとばしる情熱の結晶です。密室劇ならではの濃密な緊張感と、舞台演劇を彷彿とさせる独特の様式美が、観る者を異様な高揚感へと誘います。大女優・淡島千景が醸し出す圧倒的な気品と、水野自身の強烈な個性が銀幕上で激突する瞬間こそ、本作の真骨頂といえるでしょう。
歴史の濁流に翻弄されるシベリア鉄道という舞台は、単なる背景を超え、人間の矜持と正義の在り方を激しく問いかけます。荒削りながらも真っ直ぐなメッセージ性は、洗練された現代映画にはない剥き出しの感動を呼び起こします。これぞ映画を愛し抜いた男が到達した、唯一無二の叙事詩なのです。