オーストラリア犯罪史上、最も冷徹で魅力的な悪の深淵を描いた傑作です。リチャード・ロクスバーグ演じる汚職警官の、狂気と気品が同居する圧倒的な演技は、観る者の倫理観を激しく揺さぶります。権力という魔物が人間の魂をいかに侵食するかを無慈悲に突きつけ、観客を逃れられない緊迫感へと引きずり込みます。
虚飾を排したリアリズムと、静かながらも熱を帯びた映像美が、善悪の境界が消えた闇の濃度を際立たせています。男たちの剥き出しの野心と絶望。その生々しい対峙こそが、本作を至高の人間ドラマへと昇華させています。これほどまでに美しく、そして恐ろしい腐敗の記録は、一度目にすれば決して忘れることはできないでしょう。