主演のトゥ・メンが体現する、強欲で身勝手、それでいて孤独を抱えた「老いた獣」の佇まいに圧倒されます。経済成長の夢が醒め、荒廃した都市で無頼に振る舞う男の姿は、時代の変遷に取り残された人間の剥き出しの生を突きつけてきます。彼の瞳に宿る虚無感と時折見せる野性的な輝きが、本作を唯一無二の人間ドラマへと昇華させています。
冷徹なリアリズムで描かれる家族の崩壊と、凍てついた風景が見事に呼応し、観る者の倫理観を激しく揺さぶります。経済至上主義の中で失われた尊厳や、愛憎が入り混じる親子関係を抉り出す演出は圧巻です。救いようのない絶望の果てに、なおも人間が持つ業や執着を凝視する本作の眼差しは、現代社会を生きる我々の胸に痛烈な叫びとして響き渡るでしょう。