あらすじ
家に帰ってきたサラリーマンのじゅん(安田顕)は、玄関で血を出して倒れている妻ちえ(榮倉奈々)の姿を目にして驚く。だが、血はケチャップで彼女は死んだふりをしているだけだった。驚く夫を見てほくそ笑むちえ。それを境に彼女は、ワニに食われたり、銃で撃たれたり、頭に矢が突き刺さったりと、さまざまなシチュエーションで死んだふりをするように。あきれるじゅんだったが、理由も言わずに奇怪な行動を続けるちえに対して不安を覚える。やがて、それらが彼女の発する何かのサインではないかと考えるが……。
作品考察・見どころ
本作の本質的な魅力は、風変わりな死んだふりという行為を通じて、夫婦のコミュニケーションという普遍的で難解なテーマを鮮やかに描き出した点にあります。榮倉奈々の変幻自在でチャーミングな熱演は、滑稽さの裏に潜む「いつか訪れる別れ」への切実な恐怖や愛情を浮き彫りにし、観る者の心を揺さぶります。単なるコメディの枠を越え、他者と人生を共にする覚悟を問う深い精神性が宿っています。
安田顕が見せる戸惑いと受容の表情は、平凡な日常がどれほど脆く、そして愛おしいものであるかを雄弁に物語っています。言葉にできない想いを奇妙な儀式に託す妻と、それに応えようともがく夫。二人が辿り着く夫婦の答えは、綺麗事だけではない結婚生活の真理を突いており、鑑賞後には愛する人との何気ない会話が、かけがえのない宝物に感じられるはずです。