あらすじ
嘉永年間。江戸日本橋はせがわ町に、おしず(藤村志保)、おたか(若柳菊)の姉妹がいた。二人は病で臥せっている彫金師の父・新七(藤原釜足)に代わって家計を支えていた。そんなある日、おたかに縁談が持ち上がる。おたかは縁談の相手である信濃屋の一人息子・友吉を憎からず思っていたが、姉より先に嫁ぐことが心苦しく、また家に現れては金を持ち出していく兄の栄二(戸浦六宏)のこともあり、縁談を断ってしまう。だがおしずは信濃屋の両親に栄二のことを打ち明け、祝言をあげる運びとなり、おしずもまた好意を寄せる人がいると、おたかに伝えるが……。
作品考察・見どころ
藤村志保の凛とした佇まいが光る本作は、日本映画が誇る叙情美の極致です。画面を流れる川の情景が、抗えない運命や溢れ出る情念を象徴しており、台詞以上に雄弁な映像美に圧倒されます。静謐な構図の中に立ち上がる確かな生命の鼓動は、観る者の魂を静かに、かつ激しく揺さぶる力を持っています。
市井に生きる人々の哀歓を掬い取る演出は、単なる悲劇を超えた崇高なカタルシスをもたらします。戸浦六宏らの抑制の効いた演技が、目に見えない絆や誠実さという美徳を鮮やかに浮き彫りにします。画面の隅々にまで宿る職人技の精華に、映像表現が持つ無限の情緒と、時代を超えて響く普遍的な愛の深さを感じずにはいられません。