本作の真髄は、清廉な歌姫・園まりが魅せる静かな狂気と、喜劇のイメージを脱ぎ捨てた藤田まことが体現する人間の業にあります。愛という名の執着が、逃れられない呪縛へと変貌する過程を緊迫感あふれる映像美で描写。人間の心の奥底に潜む闇を覗き込むような心理スリラーとしての完成度は、今なお色褪せぬ衝撃を放っています。
日常の裏側に潜む歪みを捉えた演出は実に見事です。何気ない会話や室内の陰影が、追い詰められた心理を饒舌に物語り、観る者を逃げ場のない焦燥感へと誘います。人間のエゴイズムが剥き出しになる瞬間の凄みは圧巻で、鑑賞後も心に重く突き刺さるような、濃厚な情念に満ちた傑作といえるでしょう。