トマス・ヴィンターベア監督が放つ、魂の深淵を揺さぶる傑作です。全編を貫くのは、冷徹なまでのリアリズムと、その奥底で脈打つ救済への渇望。この作品の真骨頂は、過酷な境遇に翻弄されながらも、泥中の蓮のように他者への慈愛を捨てきれない人間の「生の矜持」を捉え切った点にあります。
ヤコブ・セーダーグレンらが見せる、言葉を削ぎ落とした肉体的な演技は圧巻です。画面を支配する荒涼とした色彩と、閉塞感の中に差し込む奇跡のような優しさが、心に消えない痣を残します。これは痛みを抱えながらも、水面を目指してあがくすべての人に捧げられた、残酷で最も美しい人間讃歌です。