あらすじ
営業マン朝倉は、いつものように営業車で赤信号を待っていた。同時に彼は午後1時ちょうどにいつもこの交差点に現われる名前も知らないOLも待っていた。そして彼女が現われ、思わず目が合ったその瞬間、黒い車が脇を走り抜けた直後に朝倉の営業車に黒マスクをした3人の男が飛び込んできた。前の車を追うよう脅かす男達に言われるままに走り出した朝倉。しかし、その性格から交通ルールをしっかり守る朝倉の運転に苛立つ3人。朝倉の営業車を振り切った黒い車の中で微笑む男は何者か。律儀で神経質な営業マンと銀行強盗たちのとんでもない一日が始まった。
作品考察・見どころ
SABU監督が放つ、制御不能な疾走感と不条理の連鎖が生み出す圧倒的なエネルギーが本作の真骨頂です。几帳面すぎる主人公が予期せぬ混沌に飲み込まれ、内なる殻を突き破っていく過程は、観る者の抑圧された感情を鮮やかに解放してくれます。堤真一が見せる、理性と狂気の境目で揺らぐストイックな演技は、計算された演出の中で強烈な光を放っています。
安藤政信や大杉漣といった個性派キャストが織りなす、車中という密室でのアンサンブルは圧巻です。滑稽さと悲哀が表裏一体となった人間ドラマは、単なるコメディの枠を超え、運命に翻弄される人間の本質を鋭く突きつけます。規律に縛られた日常を破壊し、加速する運命に身を投じることで得られるカタルシス。それは映像表現でしか到達できない、純粋な疾走の快楽なのです。