あらすじ
本州から少し南にある離島。坂の多い島のふもとからずっと続く石段を登りきると、下の町や海まで一望できる高台になっておりその高台の上に主人公・星野航(ほしの・わたる)たちの通う学園がある。しかし島の産業の大部分を占めていた大企業の工場が来年撤退することになり、学生の数は次第に減少していた。島にあるもう一つの高台の上に学園の旧校舎を改装した寮がある。寮生の減少にともない現在は主人公とヒロインたちのみが住んでいるその寮は、島の住人からは主人公のハーレムだと噂されている。そんな寮になぜかこの時期にやってきた転校生も巻き込み、時には反発したりしながらもドタバタと楽しい毎日を過ごしていく。
作品考察・見どころ
富永まい監督が紡ぎ出す、触覚に訴えかけるような映像美が本作の真骨頂です。鮮やかな赤を基調とした羊毛の質感と、実写にストップモーション・アニメーションを融合させた演出は、観る者をノスタルジックな白昼夢へと誘います。日常のガラクタが命を宿し、色鮮やかなファンタジーへと変貌する瞬間の高揚感は、まさに映像表現の奇跡と言えるでしょう。
岸田今日子と吉行和子という名優が放つ、可笑しくも凄みのある存在感も圧巻です。老いと記憶、そして捨てられた物たちへの慈しみを通じて描かれるのは、世界の豊かさを再発見する哲学的なメッセージ。過去を編み直し、新たな価値を見出す彼女たちの姿は、執着を肯定しつつ自由へと導く、現代の寓話として強烈な輝きを放っています。