市川染五郎(現・二代目松本白鸚)が見せる、鬼気迫る剣への執着が本作の核心です。一振りの技を極めようとする男の孤独と狂気が、稲垣浩監督の重厚な演出により、単なる時代劇を超えた求道者の物語へと昇華されています。肉体を追い込む修練の描写は呼吸を止めるほどの緊迫感に満ち、芸道と武道が溶け合う瞬間を鮮烈に映し出しています。
洗練された映像美の裏側に潜む、残酷なまでの虚無感も見逃せません。頂点を極めた者だけが知る景色の美しさと、引き換えに失われる人間性というテーマが、力強い殺陣を通して痛烈に響きます。伝統的な様式美の中に人間の深淵が覗く本作は、魂を捧げてでも高みを目指す人間の業を描き切った、真に震えるべき傑作です。