ジャン・ギャバンの重厚な気品と、ルイ・ド・フュネスの爆発的な喜劇センスが衝突する様は、正に銀幕の奇跡です。ギャバンが演じる詐欺師は、ペテンの中にも貴族的な矜持を漂わせ、作品に比類なき品格を与えています。これに対し、フュネスが撒き散らす滑稽なエネルギーが、物語に最高のスリルと笑いをもたらしています。
競馬場を舞台に、機知に富んだ対話で煙に巻く演出は、犯罪劇でありながら人生を謳歌する「遊び」の精神に満ちています。ただのコメディに留まらない、大人の余裕と人間の業を愛する温かな眼差し。洗練された台詞の応酬が描くのは、偽りさえも美学へと昇華させる、フランス映画黄金期特有の芳醇な知性そのものです。