本作の最大の白眉は、主演の伊藤猛が体現する、底知れない孤独と虚無を孕んだ「男の業」の造形にあります。寄生することでしか生を実感できない男の、哀愁漂う佇まいと刹那的な色香。それに応える平沢里菜子らの身体を張った熱演が、単なる愛欲を超えた魂の衝突として、画面越しに鮮烈な熱量を放っています。
卑猥な季節というタイトルが示す通り、湿り気を帯びた都会の片隅で繰り広げられる人間模様は、極めて抒情的かつ痛切です。剥き出しの欲望の果てに浮かび上がるのは、欠落を埋め合おうとする人間の根源的な寂しさ。閉塞感漂う日常の中で、狂おしくも美しい一瞬の繋がりを切り取った演出の鋭さに、観る者は激しく心を揺さぶられるでしょう。