三船敏郎が演じる松五郎の、野生味溢れる力強さと裏腹の純真さが本作の核心です。身分違いの恋に身を焦がしながら一家を支える姿は、日本映画史に残る男の美学の結晶と言えます。高峰秀子の気品と三船の荒々しさが対比されることで、言葉にできない孤独と情熱が鮮烈に浮かび上がります。
原作の土着的生命力を、稲垣浩監督はカラー映像の色彩美と動的な演出で昇華させました。特に圧巻なのは太鼓の乱れ打ちです。活字では捉えきれない音とリズムの奔流が、松五郎の魂の叫びとして観客の心拍を揺さぶります。映像だからこそ成し得た、情念の爆発を体感できる至高の傑作です。