あらすじ
女優の卵・赤沢じゅん子は、撮影帰りの新幹線の中でフリーライターの瀬田良作と知り合う。別れ際、東京駅のホームで良作はじゅん子に電話番号を書いたメモを渡した。数日後じゅん子は、四匹の猫に餌をやるために時々帰っているという葉山の良作の家へ出かけた。一方、じゅん子の親友であるモデルの真樹子は、親子ほども年の離れた資産家の殿村との三年ごしの恋を楽しんでいる。殿村には妻子がいるが、いずれ近いうちに二人は結婚するつもりらしい。劇団の稽古場では、毎日変てつのない授業が行なわれていたが、じゅん子は良作への想いに、稽古も上の空になりがちだった。
作品考察・見どころ
雨という舞台装置が、これほどまでに脆く官能的に孤独を包み込む作品は稀です。高橋洋子が体現する、理性と情熱の狭間で揺れる繊細な機微は、観る者の心に深い余韻を刻みます。単なるロマンスに留まらず、触れ合えない二人の魂が呼応する瞬間を、湿り気を帯びた映像美で見事に昇華させています。
安彦良和の原作が持つ叙情性を継承しつつ、実写ならではの雨音や沈黙の演出が物語に生々しい体温を与えています。漫画の静謐な世界観に、役者の視線や空気の揺らぎという肉体性を加えたことで、原作の持つ切なさがより鮮烈に迫ります。映像でしか到達できない、美しくも残酷な愛の極致がここにあります。