この作品の真髄は、閉鎖空間で繰り広げられる息詰まるような心理戦にあります。カーテンという日常的な道具を、真実と虚飾を隔てる境界として象徴的に用いた演出は実に見事です。モノクロームの陰影が人物の心の闇を鮮明に描き出し、静寂の中に潜む狂気が観る者の肌を粟立たせます。
ヴォルフガング・ヴァールら実力派俳優が見せる、視線の交差だけで感情を伝える抑制の効いた演技は圧巻です。人間の内面に潜む底知れぬ猜疑心と孤独を、映像というメディアの特性を最大限に活かして美しくも残酷に切り取っており、鑑賞後も消えない深い余韻を残す珠玉の心理劇と言えます。