明治という激動の時代、西洋音楽の黎明を切り拓いた滝廉太郎の魂の咆哮が、本作には瑞々しく刻まれています。主演の風間トオルが見せる、病魔に蝕まれながらも芸術へ情熱を燃やし尽くす繊細な演技は圧巻です。楽譜に命を吹き込む瞬間の狂おしいまでの美しさは、見る者の胸を激しく揺さぶり、静謐な映像美がその孤独な闘いを鮮烈に際立たせています。
本作が描くのは、有限の命を永遠の旋律へと昇華させようとする人間の尊厳です。鷲尾いさ子らが織りなす情愛の機微もまた、彼の旋律に深い色彩を与えています。名曲「荒城の月」の誕生に秘められた、切なくも力強い生への祈り。その調べに触れるとき、私たちは一人の天才が命を削って遺した愛の深淵を思い知るはずです。