あらすじ
199X年、地上に一陣の風が吹く。それは人々の記憶を奪う、アムネジア(記憶喪失症)の風だった。記憶を奪われた人類は、文明が崩壊、人々は野生化してゆく。そんな中、少年ワタルはアメリカ横断の旅に出かけるが・・・。
作品考察・見どころ
文明が崩壊し、記憶を失った人類が野生へと回帰した静謐な終末世界。本作の真髄は、言葉や文明という虚飾を剥ぎ取られた先に、一体何が人間を定義づけるのかという根源的な問いにあります。マッドハウスによる乾いた質感の映像が、荒廃した風景の中に漂う虚無感と、それでも蠢く生命の鼓動を鮮烈に描き出し、観る者の倫理観を静かに、かつ深く揺さぶります。
声優陣の表現力も圧倒的です。野生に埋没せず人間性を模索し続ける主人公を演じた矢尾一樹の剥き出しの葛藤と、神秘的なソフィアを演じた戸田恵子の冷徹で慈愛に満ちた声。彼らの旅路を通して浮かび上がる、孤独、愛、そして再構築される文明への意志は、現代社会で自我を摩耗させる私たちへの強烈な警鐘であり、再生への希望に他なりません。