あらすじ
ある金持ちの男は、青い髭を生やしたその風貌から「青髭」と呼ばれ、恐れられていました。青髭はある美人姉妹に求婚し、その妹と結婚することになりました。あるとき青髭は、新妻に鍵束を渡し、「どこにでも入っていいが、この鍵束の中で“小部屋”にだけは絶対に入ってはいけない」と言いつけて外出してゆきます。しかし、新妻は好奇心から夫の言いつけを守らず、入ってはいけない小部屋の扉を開いてしまうのでした。新妻はその扉を開けて驚愕しました。なんと、そこには・・・。<世界中で絵本化・戯曲化もされている童話「青髭」を、フランス映画界・耽美描写の名手、カトリーヌ・ブレイヤが独自の解釈を元に完全映画化!恐ろしくも悲しい物語を、美しいビジュアルワークと身も凍るような透明感で描き出す!第59回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品作品。>
作品考察・見どころ
カトリーヌ・ブレイヤ監督が描き出すのは、甘美な幻想の皮を剥ぎ取った後に現れる、剥き出しの欲望と冷徹な権力構造です。凍てつくような緊張感が漂う静謐な映像美と、対照的な重厚感を持つ色彩設計が、観る者の視覚を官能的に刺激します。特に、純真さと狡知さを併せ持つヒロインの瞳と、巨大な孤独を背負った男の異質な存在感は、画面越しに狂おしいほどの圧を放っています。
本作の真骨頂は、禁じられたものへの渇望を、単なる恐怖ではなく、魂の自立を懸けた通過儀礼として昇華させた点にあります。観客は単なる傍観者であることを許されず、覗き見ることの背徳感と、支配を打ち破る瞬間の鮮やかなカタルシスを同時に味わうことになります。死の影を纏いつつも、圧倒的な生命の躍動を感じさせるこの映像体験は、理屈を超えて観る者の深層心理に鋭く突き刺さるでしょう。