あらすじ
小池一夫、小島剛夕の人気劇画を若山富三郎の主演で映画化した娯楽時代劇シリーズの第3作。
参勤交代の間だけ大名に雇われる“渡り徒士”と呼ばれる流れ者の浪人たちが、街道筋の林の中で母娘相手に狼藉を働く中、ただひとり折り目正しい元武士の孫村官兵衛は、それに我慢がならず、仲間たちを斬り捨てる。幼子の大五郎を乳母車に乗せて流浪の旅を続ける途中、その現場を偶然目撃した拝一刀は、官兵衛から立ち合い勝負を望まれるが、それを断わる。しかし後日、運命の巡り合わせで一刀は官兵衛と再び対決の時を迎える。
作品考察・見どころ
若山富三郎の凄まじい殺陣は、死を背負った男の執念を銀幕に刻みつけます。静寂を切り裂く剣戟と、三隅研次監督による様式美を極めた構図が、拝一刀という孤高の刺客に凄絶なリアリティを与えています。血飛沫さえも美しく昇華させる映像魔術は、まさにこの時代にしか到達し得なかった極致と言えるでしょう。
原作劇画の精神を継承しつつ、映像では「肉体の重み」が強調されています。若山の圧倒的な剣技と加藤剛の静かな演技が重なり、宿命に抗う父子の絆が情念となって溢れ出します。紙の上では表現しきれない「動」の美学を追求し、虚構を本物の戦慄へと変貌させた、実写化の理想形がここにあります。