あらすじ
スランプに陥り、郊外の一軒家に引っ越してきた女流作家の礼子(中谷美紀)は、人けのない向かいの建物に出入りする男を見かける。男は吉岡誠(豊川悦司)という大学教授で、沼から引き上げた千年前のミイラを無断で運び込んでいた。それ見て以来、礼子は得体の知れない恐怖に襲われるようになり、小説がまったく書けなくなってしまう。
作品考察・見どころ
黒沢清監督が描く、底知れぬ静寂と腐食の美学が極まった傑作です。画面全体を支配する湿り気を帯びた空気感と、生と死の境界が曖昧に溶け出していくような演出には、観る者の感覚を狂わせる魔力が宿っています。泥や水といった根源的なモチーフが、登場人物たちの心の深淵を暴き出す装置として機能しており、単なるホラーを超えた「存在の不確かさ」を突きつける映像美に圧倒されます。
主演の中谷美紀が放つ、崩れ落ちそうなほどの危うさと執念、そして豊川悦司が体現するミステリアスな静寂。この二人の磁場が静かに共鳴し合う演技こそが最大の見どころです。愛と孤独、そして再生への渇望が、現実離れした異空間で見事に結晶化されています。これほどまでに美しく、残酷な「境界線」を描き切った映像体験は他に類を見ません。
興行成績
興行収入: $2,500,000 (4億円)
※製作費・興行収入はTMDBのデータを参照しています。収支は(興行収入 - 製作費)で算出したFindKey独自の推定値であり、広告宣伝費や諸経費は含まれません (1ドル=150円換算)。