アルゼンチン映画の黄金時代を象徴する本作の魅力は、パウリナ・シンゲルマンが放つ圧倒的な華やかさと洗練された台詞回しにあります。高慢さと愛らしさが同居する彼女の演技は、観る者を一瞬で虜にする磁力を備えています。階級の壁を軽やかに超える男女のダイナミックな掛け合いは、単なるロマンスに留まらない、人間性の本質を突く知的な喜劇としての輝きを放っています。
マヌエル・ロメロ監督の演出は、旅という状況を通じて、閉鎖的な日常から解き放たれる人間の心理を鮮やかに描写しています。反発し合う二人が理解を深める過程には、真の自由と愛の普遍性を問いかけるメッセージが宿っています。軽妙な笑いの中に深い人間愛を謳う本作は、今なお色褪せないコメディの傑作として、観る者の心に鮮烈な光を灯してくれるでしょう。