本作の魅力は、道徳的境界が曖昧な者たちが織り成す、危うくも甘美な空気感にあります。全編を漂う脱力感と、その裏に潜むヒリつくような緊張感の対比が、観る者をスクリーンの中へと強烈に引き込みます。善悪の判断を棚上げした先に現れる、人間の本質的な欲望や狡知を鮮やかに描き出しているのです。
エルモア・レナードの原作が持つ粋な台詞回しは、映像化によって色彩豊かな「ムード」へと昇華されました。活字では捉えきれない、眩い陽光と退廃的な影のコントラストは、映像という媒体だからこそ体現できた背徳的な美しさです。筋書きを超えた、スタイリッシュな映像体験こそが本作の真骨頂と言えるでしょう。